僕僕先生

実は買っていたのだった。
同日に西尾維新の新作も買っていて、袋から出したほうを先に読もうと思い、籤のようにえいやと引いた。西尾だった。しかし奥付あたりにやたらと硬いものが入っていて、ページがめくりづらいことこの上なかった。おそらく永久に読むことはないだろう。

それはともかくとして僕僕先生なのだった。半分ほど(吉良を手に入れるとこまで)読んだ
ぶっちゃけた話、SS界隈の人だと知らなければ絶対に買わない装丁だった。
作品と同じように柔らかなタッチで、悪くはないと思うのだけれど、文章とは違い絵はエッジの効いた尖ったものが好きだったりするのだ。あと、帯。どちらかといえばこっちが重要なのだけれど、「ニートと美少女が――」って勘弁してくれよって思った。
学校通いながら月平均15万近く稼いでるわけだけど、「違う。僕はこういう夢を持ってるわけじゃないんだ」と心の中で呟くほどレジのおねーさんのところに行くのが後ろめたかった。罪な本だと思う。

人物名など、とっつき難いかなと思っていたけどそうでもなく、結構読みやすく、U-1は好きだけどファンタジーはあまり好きでない僕には珍しく好みの部類。どうも、ファンタジーが好きじゃない理由は、カタカナ表記が多いからっぽい。漢字が多いと安心する自分に気付いた。

登場人物も、なんかいい。仙人の周囲にスポットが当たっているせいか、欲というもんがあんまり作品の空気に漂ってなくて、同情人物同様、透明に思える。それがいいことなのか悪いことなのかは僕にはわからないけれど、そのありえない透明さは少し離れたファンタジーにとても合っていると思った。

ただ、その透明でゆったりとした空気が、この後どうなるのかちょっと心配だったりする。このままだと、ゆったりと大きな山場も谷間もなく終わってしまうような気もしないでもない。いや、個人的には好みなのでそれでも全く構わないのだけれど、劇的に俗世にまみれたりする、そういうドラマティックな変化が合って欲しい気もしないでもない。結局どうなってほしいのか自分でもよくわからん。
ただ、よくある恋愛的な要素だけは入って欲しくないと思う。互いが対等になるようなことは初っ端から否定されているので、ないとは思うけれど。というより、おそらくは単純な二律背反が見たいと思ってるんだと思う。
僕僕を抱きたい→けれど性欲で汚したくない→じゃあそういうの捨てようや→仙人への道へ
的な、スタートとゴールが離れてしまうような、そういう矛盾した描写が欲しいんだろう。主人公は人間なので。


あと気になったのは、名前の由来。
吉良という馬の名前は、おそらく「綺羅」の神、火の煌めき、つまりは光から取られていると思う。光の名を冠するような駿馬というと、スレイプニルとか赤兎馬が思い浮かぶ(世界設定からいうと後者か)のだけれど、登場人物の名前にはやっぱり意味やら由来やらがあるのだろうか。
英参さんにちょっと聞いてみようかしら。無理だけど。
僕は歴史に詳しくないのでわかんないのだけれど、知っていると尚楽しめます、みたいな感じだと非常に悔しいので。

とりあえず読み終えます。