嗚呼、無情

「新入部員は入ったかね」
 ほんの気まぐれで後輩に送ったそのメールが、間違いなく僕の今日の始まりだった。
「4人入りましたよー」
 と返ってきた。びっくりである。その後輩を入れて5人。つまり5倍。これはスゴイ。ルーレットの赤黒で連勝しても4倍なのにっ。
 しかも、そのうちのひとりがめちゃくちゃやる気あって、夢はシナリオライターか小説家と公言しちゃうくらいの期待株<スーパールーキー>ときた
「その彼が長編の構想あるっていうんで、今日それを聞かせてもらう予定なんですよ。来ます?」
 イックー。


「お久しぶりです」
「うむ。景気はどうかね」
「ボチボチです」
「そうか」
「初めまして」
「あ、君が期待のゴールデンルーキーか。前部長の渡部である。今日は楽しみにしてるよ」
「まかせてください」
 正味惚れそうになった。


「で、どういう話なん? できれば設定から知りたいんだけど」
「僕、歴史が好きなんで歴史小説なんですけど」
「歴史? 三国志とか水滸伝とか?」
「いえ、そういうのじゃなくて、歴史上の人物を現代に呼び出すんです」
「なるほど。それで? 呼び出してどうなるん?」
「歴史上の人物同士でバトルさせます」
「あ、複数呼ばれるんだ」
「はい。高層ビルの屋上とかでバトルさせようと思ってるんですよ。歴史上の人物が高層ビルを駆け下りながらバトルってすごくないですか?」
「…………」
「どうしました?」
「あ、いや…つかぬ事訊くけど、歴史上の人物にバトルさせるっていう発想はすごいと思うんだけど、何か構想の元になることでもあったの?」
「若干fateっていうゲームからヒント貰いました」
「ふぇいと? 部長知ってます?」
「い、いや、知らんなぁ…あと、俺もう部長ちゃうからね。
 で、その歴史上の人物はどういう理由で闘うの?」
ドラゴンボールみたいな、ひとつだけどんな願いでも叶うものがあって、それを取り合って闘います」
「そうかー」
 どうみてもfateです。ありがとうございましたー。