更衣の僕

バイトだった。
14〜24時までの10時間、休憩なしでみっちりバイトだった。
前日の失敗を引きずっていたので自分でも驚くほどテンション低かった。
とりあえず前半の4時間は掃除だったので道具を手に黙々と汚れを落とした。こべりついていた汚れが落ちていくと不思議とテンションも一緒に落ちた。
渦のまく排水溝を見て自分も一緒に流れて行きたいと思った。思ったよりもキてる。とも思った。
そんなとき都合よくネズミの死骸(ミイラ)が5つほど流れてきた。排水溝はネズミを流せるほど大きくなくすぐにダムとなって水が溜まった。
やあ僕ミッキー!
そんなことを4度ほど繰り返した。ネズミを振り回す僕をみても店長は何も言わなかった。多分ちゃんとゴム手袋をつけていたからだろう。

掃除が一段落すると別の店舗にヘルプに行けと仰せつかった。が、そこへ行くには徒歩20分も歩かねばならず、ひきこもりの気のある僕は尻込みせざるを得なかった。加えて、。嫌な予感がビンビンにした。実をいうと昨日もそういう予感はしていた。
渋った。
それでも仕事のできる人間がどうしても必要なのだ、と説得され渋々受けた。
クズ人間故、おだてには弱かった。
しかし店を出てから問題が発生した。
迷った。立ち読みしたり食事したりと、僕ほど迷うことが達者な人間はそういないんじゃないかという迷いっぷりだった。
入口をくぐるのをめっちゃ躊躇した。
移動時間も勤務内かどうかわからなかったからである。

店に入ったら仕事する前からめちゃくちゃ歓迎された。
「おいおい遅刻やろお前」代わりに「渡部くんが来たらもう大丈夫や!」という店長の言葉が飛んだ。申し訳ない気持ちで一杯だった。

しかし意外なことに期待には応えられた。
ていうか楽チンだった。ヘルプ要請がよくくる理由がわかった。
ウチの店、仕事し辛い。