作品

林檎と蜂蜜、窓際の日

髪を焦がす日差しや柔らかな緑の空気。身を切る冬の空気甘い春の花びら澄み切った夜空そして彼女。言葉にして、ひとつずつ忘れていく。そうしないと生きてはいけない。そうやって生きてはいけない。生きては、いけない。目が眩みそうな紙時雨。目を開けてい…

今更過ぎるけどおねこん作

あるよ、と彼女は言った。 子供じみた言葉、永遠が。 ここにあるよ、と彼女が言った。 ――さよなら。まだ見ぬ最愛の人―― 川名みさきの周りには人が集まる。しばしば、彼女達の上げる笑い声が教室の隅にある僕の席まで届いた。笑い、自然と声が1オクターブ跳…

目が覚めると誰もいなかった。 母と、姉との名前を呼んでみたけれど返事はなかった。 犬の名前を呼んでみたところで『町内全体かくれんぼ』をしていることに思い至った。 『開催日:五月末 鬼:一番起きるのが遅かった者』 そう書かれていたように思う。思い…

オリコンに出そうと思ってたとですよ

ダイヤ乱れの踏み切り。電車はこない。けれどおりた踏み切り棒は確かに僕を拒む。彼の仲間が振ってきて僕は空き缶を見つめ崩れる砂山をおもう。もうめくることのできない聖域が放物線を描いて泥水となり僕はBGMをかき鳴らす。踏み潰す水溜りのビート。カ…